ネタバレ重点
とりあえず、今年暫定ベストな勢いなのでまだの方はぜひ見てほしい いや重ねてお願いします…
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いうなれば「俺たちが見たかったゴジラ」という虚構であり、「現実にぶち込まれた異物」という虚構、そして「俺たちが本当は当時見たかった東日本大震災」という虚構。
・「俺たちが見たかったゴジラ」
あの庵野がオタ根性を惜しみなくつぎ込んで作った怪獣映画、脚本的縛り極力もなく、全力投球した気が付けないところまで緻密な娯楽映画 というただそれだけでも見た甲斐がある。「諦めず、最後までこの国を見捨てずにやろう」というのは怪獣映画、日本SF映画、しいては邦画全体へのメッセージという風に受け止められる。
・「現実にぶち込まれた異物」
現実の内閣対応や法整備というプロセスを綿密に描きながらも、明らかに前例のない異常な事態が次第にその存在を増していき、最後には非日常(戦闘と破壊)がすべてを支配し日常と置き換わってしまう。この異物感が最も絶妙なのが第一上陸によるファーストショット*1と、その翌日に平然と始まる日常。後述する震災の時もあった景色というのもあって、これこそ今撮るゆえの映像という感じがした。
熱線照射後の東京は「ああ、もう元の日常には戻らないな」という終末感が顕著。このあたり長らく(見てきた映画では)なかった感覚という気がする。
ただ、第二形態含め異物感が顕著なのが狙った部分とそうでない部分あるなとも。道路這い回るシーンは浮きすぎなところはあった。深海魚モチーフの完全再現はやはり難しいか
・「俺たちが本当は当時見たかった東日本大震災」
失敗すれば関東壊滅、さらに言えば海外からの信用失墜。ガスマスク、タイベック(防護服)、放水車という道具立てと自衛隊を中心とし米軍の支援を受ける決死隊という構図は否応にも震災当時の情勢を連想させられる。
ただそこには「次々降りくる想定外にもひるまず 全力を尽くしたプロたちがミスなく事態を収拾する」というフィクションゆえの前提があり、これも当時の流れをたどりつつも「俺たちは当日本当はこうあってほしかったんだよなぁ」「日本はこんなショボい国じゃないはずなんだがなあ」という部分を映像化したような錯覚を受けた。というのは自分だけかもしれないが。あの理想的な流れというのは、当日の再現による英雄譚とはまた違うものという印象がある。政治家が理想的な人間すぎんだろ!もそこで。
いわゆるレジェゴジ・ギャレゴジこと2014年のゴジラも震災後の終末感の影響下にある作品だが、ギャレス・エドワーズが描いたのは『モンスターズ』と同様に「終わりが過ぎ去った後」*2的情景で、本作が描き出したものとはやはり異質だなという感じを受ける。ギャレスが描きたいのは背景でカメラが引きがちだがもっとフォーカスが近いというか。滅びのショットの中でも人間は背景になってしまわない、というのが本作多いと思う。 (なお自分はあのオープニングとHALO降下でギャレゴジ全肯定しちゃう人間です)
というわけで公式動画を張る
・HALO降下トレイラー リゲティ!
ブラックオプスでEYES ONLYなモナーク計画オープニング(カイル・クーパーのプロローグ・フィルムズ制作)
たぶんまた自衛隊や市民団体*3の描き方で叩かれたりもするんでしょうが、個人的なこれダメポイントは後半のヤシオリ作戦。規模はともかく段取りが明らかにヤシマ作戦に負けてるなあというのが惜しいと感じる。高速道路下りはガラガラ、上りは特殊車両わんさかとか、東京駅に潜入する工作班みたいな構図を積み重ねてこそ、とは思うのだけど やはり駅自体が決戦の要という構図をばらすようなことはできないかというところもあり それでも前半自衛隊ばりの気合入れて作戦準備を描いてほしいと思ったのはたぶん自分だけじゃないと思う。 …満員御礼ディレクターズカット版とかやりませんか
あとは(国家存亡の非常時とはいえ)所謂「徹夜映画(徹夜で無理をやって目的を完遂する)」あたりも 邦画のお約束ではあるが引っかからなくもなく。今年は時間確保のために試験すっ飛ばした結果奇跡は起きないから奇跡って言うんだよね…となった『火星の人』(オデッセイ)もあったゆえに。
その他雑多な小ネタ
・あんまり使うべき単語では無いかもしれないと思いつつも書きたい 「『第弐位相』度高い映画」 怪獣版ブラックホークダウンは無理だけど、怪獣版ずっと超会議連続な映画は撮れましたよ… たぶん喜んでくれるはず…
もちろん、彼のレビューなど望むべくもないが それでも絶望はしない。
・ふせったーネタ
Masked tweet by @proto_typo | fusetter
シンゴジのヤシオリ作戦、新劇のときのインタビューで 「第1射外した後のラミエルの反撃を受けたときの下の作業員大丈夫なんですか?」に対し「死んでます」という答えだったのをめっちゃ真正面から見せるのがエグいアンサーに感じる。そりゃ死にますよね、という。あの様子だとたぶん第4次隊くらいまでは用意してそう
・全編に漂う小松左京イズムとマイクル・クライトン風味。首都消失的ポリティカルフィクション、見知らぬ明日的国際情勢に日本沈没的な破滅と日本(というか東京)に対する情緒が濃厚な一方で、「使徒、侵入」に多大な影響を与えたクライトン『アンドロメダ病原体』とその映画化作品『アンドロメダ…』のような多分野専門家大集合ッ!しかし彼らが全力を尽くしてもわからないことのヒントは目の前にあったッ!的構図が こう 両作家ファンにはおいしい( せっかくBD版も出たのだしコメント寄せてほしい
(追記)アンドロメダモチーフとしてはあの謎解きの紙とそのトリック、そしてゴジラ生体組織の詳細もそうだけど、「血液凝固剤で固めて活動を停止させる*4」もひょっとして いや、やりかねんな
・スカイツリーが存在しないかのような東京 まあ仕方ないね
・「彼らはニューヨークでも同じことをするそうだ」 1984年も遠くになりにけり そもそも、核抑止を成立させてる時点で当時でもあの返し 通用しなかったかもしれないなどとも
あそこまできてスーパーXもメーサーもない潔さ
・ヤシオリ作戦の無人機乱舞 空自は落ちるシーンの関係で難しいとは言うし陽動だしあれは有人機ではできませんよねー と納得していたら それを超えるパワーワード「無人在来線爆弾」が出るとは… 海自の出番はもちっと欲しかったかも
・貫通爆弾搭載のB-2がグアムに待機してるって、要は東アジア有事待機ってやつですよね…